慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

『論文の教室』例文の分析

 今日は『論文の教室』を分析していきます(「分析する」という言い方は、少し大げさかもしれません)。ここで重要なのは、例文にある表現やテクニックを、自分の課題(論文・レポート)に役立てるように盗むのです。そこで、ここでは課題に使えそうな表現やテクニックを抜き出していきます。
 まず「はじめに」のところから見ていきます。


1 はじめに
 例文では、この部分は至ってシンプルに書かれています。論文の目的と、章立ての説明だけです。この論文では、この「はじめに」の部分が「起」に当てはまります。

本論文は、高等動物も権利の主体でありうるというピーター・シンガーの議論を擁護することを目的とする

 まず「本論文は〜ことを目的とする」という言葉をゲットしましょう。書き始めは全てこんな感じで進めていきます。他に「このレポートは、〜することを目的としたものである」という書きかたもあります。

そのためにまず、動物に権利を認めるべきか〜明らかにする(第2節)。
ついで、動物に権利を認めるべきだと〜議論を紹介し、それに対して〜議論を擁護する(第3節)。
最後に、動物に権利を認めることが〜どのような帰結を生むかを検討する(第4節)。

 太字にした部分の表現をゲットしましょう。


 この論文の第2節では、問題の背景の説明がなされています。起承転結の「承(=旧情報)」に当てはまります。動物権利論ってどうして出てきたの?この動物権利論って一体どのようなものなの?動物権利論って、一体何を問題としているの?ということが書かかれています。


第3節は二つの部分に分かれます。
 「1.シンガーの議論」では、シンガーの議論がどのようなものかを説明しています。引き続き「承」に分類されます。そして、次の「2.シンガーの議論に対する批判に答える」が「転(=新情報:筆者の考え)」に当てはまります。
なぜ「転」かというと、筆者がそれに対して考えられそうな批判を洗い出し、その批判について反論しているからです。
 このようにシンガーの議論をエンパワメントすることで、動物の権利を認めることの正当性を主張しています。


 第4節は、引き続き「転」です。前節において、動物の権利には正当性があることが証明されました。でも、問題はまだ残っています。「動物の権利」を認めると、肉食や動物実験はできなくなってしまうのではないか?という問いです。
それに対する筆者の意見が書かれています。


 第5節は「結」です。論文で成し遂げたことを簡単にまとめた上で、この論文でやり残したことも簡潔に書かれています。


 次回は「2.動物権利論の意味と背景」について書いていきます。