いつも適当に、このブログを書いてます。2週間ほど前に社会学史1について書きましたが、あまりにも適当過ぎたかなと思い、改めて丁寧に書いてみたいと思います。この社会学史1は文学部でも易しい部類の科目です。ですので、学士入学で学習が立ち止まっている方は、この社会学史1から再スタートしてみてはと私は思っています。
以下ではミシェル・フーコーに関して書いていきます。社会学史1(1)、社会学史1(2)の続きです。フーコーは20世紀を代表する哲学者の一人です。彼に関して書かれた文献は、卒論に関係なくとも、一度目を通してみることをおすすめします。
- 作者: ミシェル・フーコー,Michel Foucault,田村俶
- 出版社/メーカー: 新潮社
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そこでこのフーコーは、この文献で権力が、この社会の中でどのような形で現れているかについて考えました。そして、それが「規律」という形で現れている、と結論付けました。軍隊や学校、施療院(後に会社)などで厳しい訓練が行い、そして人々に規律を身に付けさせる。そして、そこで規律を身に付けた者は、「道徳」の伴った人格者として尊敬されます。学校ならば「優等生」という言葉が当てはまるでしょう。この場合、訓練が鞭、尊敬の念が飴です。
このような規律がいかにして身に付けられるか、ということについてフーコーは「一望監視施設(パノプティコン)」という監獄をたとえとして用いています。この建物は円環状で、その中心に監視塔があります。円周状に独房が並べられており、内側は窓が開けられた状態になっています。監視棟から独房を見ることはできますが、独房から監視塔を見ることはできません。一望監視施設では、看守が実際に監視されている、いないに関わらず、囚人は常に監視されているという視線を感じ、その視線を内面化します。そうすることによって、次第に囚人たちはそこで定められた規律を守るようになります。フーコーは、この一望監視施設のような権力が社会全体に行き渡っていると考えました。
現代の我々も、訓練によって体にしみこんだ規律に従って生きています。電車を待つときはきちんと列になりますし、自動車を運転するときもきちんとマナーを守ります。ツタヤなどで会員カードを申し込むとき、身分証明書として免許書を差し出しますが、そのとき「ゴールド免許です」と誇らしげに言います。こうしたフーコー的な権力(=規律型権力)は、いろんなところで目にすることができます。
ところで、栃木県立大田原高校では、毎年85キロの道のりを歩く競歩大会という行事が行われます。漫才師のU字工事の母校で、宇都宮大学や東北大学、早稲田大学に強い進学校です。この85キロというのは、はるな愛さんが24時間テレビで走った距離と同じです。この行事は保護者も協力する大イベントですが、そうした行事(=訓練)を経験することによって、生徒たちは「大高生」になっていきます。このことをはるなさんが知ると、「感動」とは一体何か再考を迫られることでしょう(でも私は小さい頃から24時間テレビが大好きです。)
しかしこのフーコー的権力は、現代では次第に制度疲労を起こしています。例えば10年前ならば、インターネットのマナーを意味する「ネチケット」という言葉がありましたが、今ではそうした言葉は聞かれないようになりました。いくらマナーの向上を叫んだところで、あまり効果はないからです。でもその代わり、mixiなどのSNSは周囲との環境に壁を設けることで、マナーの定着をユーザーに喚起させることに成功しました(ただ、それはしばらくして失敗するのですが…)。
このように、規律や訓練ではなく、工学(テクノロジー)の力で人々の行動を支配(コントロール)しようとする権力のことを「環境管理型権力」といいます。この環境管理型権力は、ネットの外でも見られます。
これに関して、マクドナルドの座席や、新宿駅西口の座席がよく例として用いられます。マクドナルドの座席は、一般の喫茶店の座席よりも堅く作られています。そうした堅い椅子では長い間座っていられることができません。椅子を堅くすることは、客の回転率を高めることにつながります。
一方、新宿駅西口の座席には、手すりが設けられています。それはホームレスや酔っ払いが寝っころがないようにするためです。このように、モノに工夫を加えることで、人々の行動を管理すること、それを「環境管理型権力」といいます。
社会学史1のレポートでは、「承」にあたる部分(1600字前後)でフーコーの権力の説明を、そして「転」にあたるところ(1600字)で、フーコーの権力論が通じるところ、通じないところについて書けばいいでしょう。その際、環境管理型権力について調べる必要が出てくるかもしれませんが、そのときは社会学者の東浩紀さんの文献を参考にするといいでしょう。私は↓が一番分かりやすいと思います。
- 作者: 東浩紀
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