慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

卒論のパターン

 卒業論文には、いくつかのパターンがあります。今思いつくだけで三つ存在します。一つ目は、「AはBだ」型。二つ目は、「Cに関して、私は賛成(反対)だ、その理由はDだからだ」型。三つ目は「現状がEなのには、背後にFというメカニズムが存在するためである」。四つ目は「Gという現象に対して、○○さんの理論を適用すると、理解しやすくなる」というものです。具体例を下に書いていきます。
1.「AはBだ」型
 これは、あまり明らかにされていないAという事柄に関して、より深く調査を行い、Bという真実を導きだす、というものです。例えば、社会調査なんかがそれに当てはまります。
 一つ目の例は、祭事について。ずっと前に書いたかもしれませんが、K県のN島というところに「○○祭り」という祭りがあったとします。が、あまり深く知られていません。その祭りについて、歴史、経済規模や動員数、地域や地域外の人々の思い、など、何かまだ明らかになっていないことを見つけ、それを調べて書けばOKです。
 二つ目の例は、ある社会政策が施行された後、どのように社会が変わったか、というものです。例えば、以前の大学で、卒論に、女性専用車両について書かれたものがありました。女性専用車両に対して、人々はどう思っているのか、もしくは、女性専用車両の乗車率、他の車両の男女比、施行後、人々や駅員の考えはどう変わったか、などです。
 この型の論文は、失敗するリスクは少ないですが、いろんな人から意見を聞かなくてはならないため、人付き合いの苦手な方にとっては不向きです。


2.「Cに関して、私は賛成(反対)だ、その理由はDだからだ」型
 私がおすすめする本に『論文の教室』があります。この例文では、作文ヘタ夫君が「動物に権利を認めるべきか」という課題に対し、ピーター・シンガーという哲学者の文献などを援用し、「賛成だ」という結論を導いています。別の例を挙げると、「高校生に対する、学費を無料化の是非」や「就職できない若者に対して、自治体が税金を用い、就職先を斡旋することの是非」なんかがあります。最近マイケル・サンデル氏の『これから正義の話をしよう』という本が流行っていますが、きっと参考になると思います。私は読んでいませんが。

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

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3.「現状がEなのには、背後にFというメカニズムが存在するためである」型
 これは、ある社会問題などの背景を探る、というものです。例えば、前の日記でプロレスについて書きました。「受けの美学」を重視した古きよきプロレスの人気が低下し、総合格闘技やショーを重視したプロレスが現在流行している。その背景には何があるの?という、その「何」を探るのです。
 ウィキペディアには、受けの美学に対する反論、ということが書かれていました。しかし、他にも理由があるはずです。例えば、プロレス全体の人気がなくなったため、これまでファンにはなりえなかった女性の人気を獲得するために、ショー的要素を増やした、とか、地域の過疎化を救うために、プロレスを個性化させた、とか、先輩レスラーに対する不満や反発、とか、いろいろです。もしその、理由が「女性の人気を獲得するため」であるのならば、具体的に、現場でどのような試みがなされているかなどを調べる必要性があります(となると、1.と変わらない気がしてきた)。
 続く。