慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

理系の人がつまずきやすいところ(1)

 今回はレポートで、理系の方がつまずきやすいところについて書きたいと思います。私はもともとは工学部志望だったので、高校生のとき作文や小論文の練習はしたことがありませんでした。大学に入って、数学を逃れるため文転した矢先、周りは小論文で入学した学生ばかりだったので、「一難さってまた一難」という言葉がまさに当てはまる時期をすごした経験から書きたいと思います。
 小論文を学んでいない理系の学生が大学に入って、文系の科目を履修したとき、(適切な言葉は思いつかないのですが)「不安になるほど自由な」ものであると感じると思います。数学は(もちろん全てがそうではないですが)一つの答えを求めるのに決まったパターンが存在しています。しかし、小論文の場合、自分が定めた一つの答えを導くのに様々なプロセスが存在します。理系の学生が小論文を苦手とする理由は、たくさんあるプロセスの中から、適切な数のプロセスを選んべないことが原因だと思います。小論文には、思い切って書く度胸が必要ですが、「はたして、そのプロセスを選んでしまってよいのだろうか」と心の中で揺らいでしまうのが、ずっと苦手なままである理由でしょう。
 例えば(慶應ではそんな問題は出ませんが)「高校授業料無料化についての意見を記述しなさい」という問題があったとします。苦手な学生は、この問に対して「賛成」か「反対」かの意見は持っていたとしても、その理由を答えることはできないと思います。その理由の中から何を選び、どれだけ深く書けばいいのかわからないと思います。
 賛成意見や反対意見には、様々なものがあります。私個人はどちらかというと反対派なので、反対意見だけを述べると、私が思いつくだけでも5つあります。

(1)財源はあるのか
(2)勉強しない学生に高卒の学歴を与えることになるが、それでもいいのか
(3)私立学校は無償の対象になるのか
(4)インターナショナルスクールや民族学校はどうするのか
(5)無償化によって高卒の価値が下がらないか

 もちろん賛成意見もたくさんあり、それにも納得に値する根拠があります。授業料を無償化させるかさせないかについては、明確な答えはありません。グレーです。
 小論文に不慣れな学生は、上に述べた5つの理由のうち、どれを書けば正解or不正解になるかを考えてしまいます。別に(1)だけを書いても書いても合格点はもらえるのに、「(1)〜(5)全てについて書かなくてはいけない」と思い込んでしまって、まとまりのない文章を書いてしまいがちです。文字数の規定が2万字だったらこれら全部書けるかもしれませんが、2千字〜4千字の場合は、そのうちの何かに絞って書く必要があります。でも、絞ることは慣れないうちは怖いです。そのときは以下のように書くといいです。

 筆者の意見は、高校無償化に反対である。これまで、この問題に関して様々な議論がなされてきたが、反対意見として以下のものがある。(1)財源の有無、(2)勉強をしない学生や留年生に対する措置、(3)私立学校に対する措置、(4)インターナショナルスクールや民族学校に対する措置、(5)無償化による高卒の価値の低下、である。今回はその中で、財源の有無に焦点を当て論述したい。

 しかし(1)財源の有無に絞っても、またその中に様々な論点があります。そこからまた、いくつかに絞って論述していかないといけません。数学では、解答用紙の中に不必要な数式があったとしても原点されないと思います。しかし、小論文は字数制限があるため、様々な論点の中から必要なものを選び取り、他に書きたかったことがあったとしても、勇気をもって捨てることが必要です。