慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

社会学史1(5)

 文学部1類に学士入学して、どのレポートを書こうか迷ったら、社会学史1をおすすめします。約400字で「はじめに」、1600字で社会学者の議論の要約、1600字で現代的視点からの分析、400字で「終わりに(まとめ)」という感じで書いていくと良いでしょう。
社会学史1(1)
社会学史1(2)
社会学史1(3)
社会学史1(4)
 この課題で注意しておきたいのは「現代的視点からの分析」という点です。「現代的視点って何?」と思われる方は、きっとおられるでしょう。この言葉を言い換えると、以下の二点になります。
(i)昔の人の議論だけれども、今の時代に当てはめるとしっくりくるよ
(ii)この議論は、今の時代にはそぐわない、もっとしっくりくる別の意見があるよ
 (i)のケースが、以前私が書いた『社会学史1(4)』です。ここで私はロバート・キング・マートンの議論を紹介して、彼の議論が今でもしっくりくるものであると書いています。しかし残念ながら教科書の『クロニクル社会学』にはマートンの議論は載ってませんでした。うっかりです。
 このままだとアレなので、他にマルクスを例を挙げて解説しましょう。マルクスの言葉の一つに「疎外」というものがあります。『クロニクル社会学』にはこのように説明されています。

 それ(=疎外)は資本主義社会における社会と人間の関係を描写する概念であると同時に、資本主義社会を批判する視座でもある。一言で言えば、疎外とは人間が主人公であるべき社会が、人間から疎遠な(fremd)になることである。

 踏み込んで説明すると、人間が生み出したものによって、逆に人間が支配されてしまうことです。例を挙げると、「神」や「お金」。たとえば、お金は本来は物々交換をスムーズにする手段であったのに、逆にその価値観は人間を縛り付けています。おそらくお金は、物を買うことによって自分自身を豊かにしていく道具でしょう。でも、逆にお金に支配されている人って多いですよね。
 他の例では、「就職先」があるかもしれません。今、就職先が決まらない、もしくは就職先が不本意であるという理由で自殺する学生が増えています。仕事をするということは、私は自分自身を試すことだと思っています。でも、他人と比べたりして、卑下してしまう。もしくは、ネットの就職先ランキングを見て悲観する。それが自殺につながってしまうのですかね。
 「学歴」も同じです。大学は、本来勉強して自分を高める場でしょう。しかし、大学のブランドにこだわるあまり、不本意入学などで勉強の意欲を失ってしまったり、優秀な他人と比べて自分を卑下してしまったりする。本来的ではないですよね。さて、誰でしょうか。私です。
 マルクスに関しては、日本語に訳された原書を読むと日が暮れるどころか人生を費やします。というか、日が暮れる程度でレポートが済めば天才です。漫画とか早わかり本(新書)から読んでいくしかないです。それが一番の早道です。
 それから(ii)のケースですが、私が書いた『社会学史1(3)』『社会学史1(4)』です。端的に言うと、現代のコンピュータ社会では、フーコーの議論はなかなか当てはめ辛い、というものです。このことに関しては、『社会学史1(3)』『社会学史1(4)』を再読していただければ幸いです。
 学士入学の方は、この科目から始めていくことをおすすめします。すでに別の単位をとられているならば、社会学史1は比較的易しいはずです。