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英語学概論(2)

 英語と米語の違いです。TOEICなどを勉強されているかたはわかると思いますが、イギリスの英語とアメリカの英語はちょいと違います。

現代の標準的英語と標準的米語の相違を、具体例を挙げて論ぜよ」

はじめに
 このレポートの目的は、現代の標準的英語と標準的米語の相違を、具体例を挙げて論ずることである。イギリス人は1607年にジェームズタウン、そして1620年にはケープゴッドへとアメリカへの入植を積極的に行ったが、それ以降米語と英語は別々の進化、発展を遂げることとなった。そこで以下において、この両者の違いについて、語彙(第1章)と綴り字(第2章)の面から論じていきたい。

第1章 語彙の違い
 米語は英語と比較し、多様な語彙を持っている。これはイギリスだけでなく、ドイツやフランスをはじめとする数多くの人々が新天地に大量に移民してきたことによる。では、アメリカでどのような言葉が生まれたのであろうか。
 一つ目はアメリカで新たなものを見たことによって意味が変化したものである。‘corn’について、イギリスでは集合的穀物、穀類を意味するのに対し、アメリカではトウモロコシを意味する。アメリカの入植者が初めてトウモロコシを見たとき、それに対し単純にIndian cornと名づけたことによる。また、‘creek’は米語では「小川」を意味するが、イギリスでは「入り江」を意味する。これは、入植者の目に初めに入り江(creek)に見えたものが、後になって小川であることがわかったことによる。このほかに、‘lumber’は米語では「材木、木材」を意味するが、英語では「不用品の家具など場所をとるがらくた」を意味する。
 二つ目は語と語を組み合わせた新たな語、つまり複合語である。初期の複合語には、selectman、frame house、ground hog、horse cart、mockingbirdなどがある。このほかにもアメリカ入植者は、名詞をそのまま動詞にする品詞転換によって新たな語を生み出している。‘to clapboard’(羽目板を張る)や‘to powwow’(協議する)などがそうである。
 三つ目は‘set up’が‘setup’となるように、動詞と副詞がくっつき、一つの単語となったものである。これには‘handout’や‘drive-in’などがあてはまる。
 四つ目はDOT(Department of Transportation:米運輸省)やSAM(surface-to-air missile:地対空ミサイル)のように、頭文字をつなぎ合わせた頭字語(acronym)である。また、ad(advertisement)、phone(telephone)のような省略語である。
 ところで、語彙に関する英米差は非常に大きい。同じ言葉でもアメリカとイギリスで異なった意味を持つものや、同じ物体に対して異なる言葉が与えられているものが存在する。
普通の言葉では、約4000語がアメリカとイギリスで異なった使われ方をしているといわれるが(浦田 1995:148)、次にこうした違いについて見ていきたい。
まず前者の例として、homelyはアメリカでは「不器用な」という意味を持つが、イギリスでは「家庭的な」という意味を持つ。この他に、pants(米:ズボン/英:パンツ)、pavement(米:舗装道路/英:歩道)、subway(米:地下鉄/英:地下道)がある。
 また後者の例として、アパートがある。これは米語ではapartment、英語ではflatと訳される。この他に、エレベーター(米:elevator/英:lift)、ガソリン(米:gas/英:petrol)、郵便(米:mail/英:post)、休暇(米:vacation/英:holiday)などがある。

第2章 綴り字の違い
 続いて、米語と英語の綴り字の違いについて見ていきたい。米語と英語を比較すると、米語の綴り字は、英語よりも簡略化されているものが多いといわれている。そこで、ここでは、綴り字の違いの特徴を5点にまとめて、例をあげたい。
 まず一つ目は、特徴として米語には発音されない文字を脱落させることで、簡略化されているものが多いことがあげられる。それには以下の種類がある。
・米:-or、英:-our(color/colour、humor/humour)
・米:-l-、英:-ll-(traveler/traveler、traveling/travelling)
・米:-o-、英:-ou-(mold/mould)
・米:-log、英:-logue(prolog/prologue、catalog/catalogue)
・米:-m、英:-mme(program/programme)
・米:--、英:-e(judgment/judgement)

 続いて二つ目は、米語は外来語に関して、同じ音を表す最も普通な書法を一般化して用いる傾向が強いことである。
・米:-er、英:-re(center/centre、liter/litre)
・米:-e-、英:-ae-、-oe-(anesthetic/anaesthetic、amebaamoeba
・米:-ct-、英:-x-(inflection/inflexion)

 三つ目は、もとの単一後の書法を保持することによる簡易化である。例えば英語のfulfilは、米語だと‘fill’という言葉を保持しようとするため、‘fulfill’となる同様に、英語でskilfulは米語だとskillfulとなる。この他に、以下のものが当てはまる。
・米:enroll、英:enrol

四つ目は、文末の「〜化する」を意味する‘-ize’である。こうした言葉において、米語では‘-ize’が利用されるが、英語ではそれとあわせて‘-ise’も利用される。
・米:-ize、英:-ize、-ise(organize/organise・organize )

 五つ目は米語では‘ce’で終わる単語である。例えば、米語のpracticeは英語だとpractiseとなる。この例として以下のものがある。
・米:-se、英:-ce(defense/defence、offense/offence)
 以上が綴り字における英語と米語の違いである。

おわりに
 以上において英語と米語の違いについて、語彙と綴り字を中心に述べてきた。米語は英語と比較して、語彙と綴り字という点においては豊富である。しかし、それにもかかわらず米語は英語と比較して方言の差は小さい。それは公教育の場で国民としての自覚を持つべく統一的な話し方をするよう促されたためであると言われている。
 ここでは語彙と綴り字を中心的に取り上げたが、それゆえ発音、文法に対して深く考察をすることができなかった。これを今後の課題としたい。

■ 参考文献
浦田和幸「アメリカ英語」、松浪有編『英語の歴史』(1995)大修館書店
高田治美「英語の多様性」、高田治美他編『英語学概論』(2008)佛教大学
本名信行「世界の英語」、松浪有編『英語の歴史』(1995)大修館書店