慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

テキストの読み方(1)

 レポートを書くためには語彙力(日本語力)が要りますが、慶應通信を卒業するためにはそれだけでは不十分です。たくさんの文献を読み解く力、つまり読書力も必要です。ここでどのように本を読めばいいか書いていきます。


1.3分の2のテキストを仕舞いましょう
 入学直後、たくさんのテキストが届いて、びっくりなさった方は多いと思います。文学部なら全部で65冊前後送られてきます。中には旧かな遣いに近く、読むだけでも一苦労するものもあります。しかし、その中の3分の2は個人にとって必要のない文献です。私は卒業までに18本のレポート・論文を書きました。(私は哲学・社会学倫理学を重点的に選び、一方漢文学や日本古典、東洋史などはノータッチです)。
 つまり私にとって必要なのは18冊で、それ以外の約45冊程度の文献は必要のないものです。
 みなさんも同じように、その場で捨てても差し支えのないテキストがたくさんあります。まずは興味のない&単位取得の困難な科目を本棚から下ろし、ダンボールにつめてしまいましょう。


2.通信のテキストが難しいならば、似たことが書かれている易しい本を読む
 通信のテキストの中には、幾つか難解なものがあります。日本語の使い方が今とはかけ離れているものです。その一つに、西脇順三郎先生がお書きになった『近世英文学史』があります。
 西脇先生は谷崎潤一郎と共にノーベル文学賞候補だけではなく、文化功労賞や、アメリカ芸術科学アカデミーの外国人名誉会員に選ばれるなど、英文学の権威とも言える存在です。
 しかし、(それだけに)テキストはきわめて難解です。おまけに、科目試験も難しいです。私が初めて書いたレポートが、(私の記憶が正しければ)その近世英文学史だったので、当時科目の難易度を知らなかった私は、しょっぱなから躓きかけてしまいました。
 そんな時、一体どうすればいいか。
 他の易しく書かれている文献を参考にするんです。私は近世英文学史のレポートの参考文献として、川崎寿彦先生、相島倫嘉先生のものを使いましたが、それに目を通した後で『近世英文学史』に目を通すと、その難しさが幾分かマシになります。
 なお、テキストや参考文献の全てを熟読する必要はありません。必要なところをかいつまんで読めばいいのです(ただ何か1冊でも熟読した文献があれば、それは自信につながり、卒論を書くときに役立つと思います)。
 ほかに、歴史学系のテキストも難しいものが多いみたいです。そうした科目も、別の易しいテキストを図書館や書店で見つけ出し、あらかじめ読むようにしましょう。


3.「早分かり本」として新書を活用する
 卒論レベルとなると難しめの文献を読む必要が出てきます。さすがに(文学部3類を除いて)原著を読むということはないのですが、海外の有名な哲学者や社会学者の書いた文献の日本語訳を読まないといけません。
 私は卒論でアドルノ・ホルクハイマー『啓蒙の弁証法』を読んだ(目を通した)のですが、いきなりこうした文献を、日本語訳であっても読み通すのは不可能に近いです。
 そういったときは、簡単に書かれている「早分かり本」から目を通すのが一番です。
 まず最初に読みたいのが新書です。岩波新書中公新書集英社新書光文社新書ちくま新書幻冬舎新書、いろいろあります。書きたいと思っているレポートに関連した新書を、まず書店から探しましょう。
 また、岩波書店の『思考のフロンティア』シリーズも便利です。文学部1類で哲学・人間関係を専攻する通信生にとっては、卒論を書くときに不可欠なものとなります。
 私は文学部1類以外の学部についてはあまり知りません。法学部や経済学部の文献を紹介するのは難しいですが、法学関連、経済学関連にも早分かり本はあります。例えば経済学部の学生には、日本経済新聞社の日経文庫がおすすめです。他学部の私にも、割かしすんなりと読めました。


 以上をまとめると、以下のようになります。

1.3分の2のテキストを仕舞う
2.慶應のテキストが難しいなら、近い内容の易しい文献をまず読む
3.新書を読みましょう

というわけで、こんな感じで頑張りましょう。


・関連リンク
「近世英文学史http://d.hatena.ne.jp/dunton/20100627/1277577650
・おすすめ文献

だから、新書を読みなさい

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