慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

英語学概論&現代英語学

 英語学概論と現代英語学、この2つの科目は比較的易しく、大学受験を経験した学士入学者にとっては穴場科目です。これらの科目は言語がアメリカやその他の国でどのように使われているかという、社会言語学としての知識が問われます。そのため、英語1・2・3・7と比較して、高度な英語力は必要ありません。ですので、何とかレポートは書けるけれども、総合科目の英語が苦手な普通入学・特別入学の方にもおすすめできます。
 この2つの科目は、問われていることがそれほど離れておらず、同じ参考文献でレポートを書くことができます。しかも両方とも3単位で、二つ併せると6単位になります。『社会言語学入門』(東昭二:研究社)、『英語の感覚・日本語の感覚』(池上嘉彦:NHKブックス)、『<英文法>を考える−<文法>と<コミュニケーション>の間』(池上嘉彦筑摩書房)、以上の3冊で大体の概要を掴みましょう。


1.英語学概論
 まず英語学概論ですが、この科目において押さえておきたい点は、アメリカや香港などの多文化が混ざり合う地域では、英語の使われ方が日本とは大きく異なっているということです。
 日本では、大抵日本語が使われます。在日華人・朝鮮韓国人の方も、3世以降は日本人と同じように日本語で生活します。現在では母国語を喋ることができない在日外国人の方が多いです。私の友人もみんなそんな感じです。
 しかしアメリカや香港などでは、二つ以上の言語が使える人が多く、彼らは時と場合によって言葉を使い分けます。例えばアメリカは移民国家です。ゲルマン系・ラテン系・スラブ系・アジア系・アフリカ系、ごっちゃに混じっています。アメリカはこれまでWASP(白人・アングロサクソン系・プロテスタント)と呼ばれる人々が権力を握ってきましたが、近年ヒスパニックと呼ばれるスペイン系の人々が急増しており、次第に力を持つようになってきています。
 彼らは民族語であるスペイン語とアメリカの主流言語である英語を生活の場面で使い分けています。(最近では、スペイン語しか話せないヒスパニックの人が増えてきているようですが、詳しいことは私は知りません)。
 まずスペイン語は、家庭で身に付け、家族や友人など親しい人で使われます。
英語と比較してフレンドリーですがインフォーマルです。
 それに対して英語は学校で身に付けられます。英語は教会やビジネスなど、フォーマルな場面で用いられ、スペイン語よりカッチリした感じです。
 また、この2つの言語は生活の場面だけでなく、喋る人の感情によっても使い分けられます。
“Come here. Come here. Ven aca.”→心理的距離を近づけようとする喋り方。
“Ven aca. Ven aca. Come here.”→途中で相手を突っぱねるような喋り方。
 こういった言葉の使い分けのことをコードスイッチングといいますが、レポートを書く際は、これをおさえておけばOKでしょう。


2.現代英語学
 このレポートは、英語と日本語という2つの言語の比較だったと思います。英語と日本語は、文化の全く違う言語なので、言葉の使われ方には大きな違いがあります。
 例えば英語では“I see several stars.”となるものが、日本語では「星がいくつか見える。」となります。この場合、日本語では「私」という言葉がありません。
 また英語の“Where am I?”を日本語に訳すと「ここはどこですか?」となり、これもまた「私」という言葉がありません。これはどういうことかというと、英語が「客観的把握」の言語であり、日本語が「主観的把握」の言語であるためです。
 英語では、「物事を感知している私」という存在を把握していますが、日本語ではそういったものはなく、「私」から離れた周りの環境をあるがままに受け取ったような表現がなされます。
 で、言語が「客観的把握」を好むか「主観的把握」を好むかは、その社会のコンテキストに依存します。「コンテキスト」というのは「蓄えられた情報」を意味します。交わされる言葉の中にどれほど共通知識・共通認識が存在しているかによって、コンテキストの高低が決定されます。
 アメリカは日本と比べて多民族です。ですので、日本と比べてコンテキストはかなり低いです。以心伝心の日本と比べて、アメリカでは多言を用いなければコミュニケーションは成立しません。
 レポートに書くことは、以上のような感じです。


 日本もそろそろ多民族国家に突入しそうな感じです。こうした言語文化について知っておくと、今後きっと何かと役に立つでしょう。