慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

要約は大切です

 卒業論文には、かならず要約という作業が必要です。要約が必要なのは、以下の2つの場面です。
(1)卒業論文を提出するとき→卒論の要約もあわせて提出する必要があります。
(2)卒論の「承(=旧情報)」を書くとき→論文中で先行研究を要約する必要があります。
 ここでは(2)の方が重要ですので、(2)について話していきますが、その際に便利な文献を紹介したいと思います。


 例えば、卒論に関して『異邦人』(カミュ)を書きたいと思っている人がいるとします。そして、『異邦人』に対して自分が持っている新たな見解を提示する、というのが卒論の目的だとします。その際、その見解がどのようなものであれ、承の部分で『異邦人』と、それに関する複数の先行研究(=旧情報)の要約を行う必要があります。
 卒論は、そのテーマについて知らない人に分かりやすく伝えることが重要だとよく言われます。ですので、これまで『異邦人』を読んだことのない人に対しても、大体その内容がつかめるようにしておかなくてはなりません。また、その小説について、これまでどのような議論が行われてきたか、社会が『異邦人』をどのように捉えたのかについても書いておく必要があります。『異邦人』を読んだだけで卒論を書こうとすると、「面白かった」「可哀想だった」くらいのレベルの感想文しか書けないと思います。
 仮に卒論のタイトルが『エヴァンゲリオン』に関することであったとしても、アニメを見ただけで卒論を書くことができないでしょう。その場合、『エヴァンゲリオン』の世界観(「セカイ系」)などについて論じられているものを読むことが必要となります。
 『異邦人』も、当時の社会に関して書かれた文献、特に実存主義について書かれた文献や、カミュと比較されがちなサルトルの文献を読む必要があります。そして、カミュやその他の批評家が書いている、大切なところを要約していかなくてはなりません。この大切なところというのは、それに賛成であれ反発であれ、自分の意見と大きく関わるところです。この旧情報を踏まえない限り、「転(=新情報)」、つまり自分の意見を書くことはできません。
 この、要約の仕方について詳しく載った文献があるので紹介したいと思います。すごくわかりやすい文献なのに、今まで紹介していなかったのでびっくりしました。

文章の設計図を用いた「読ませる」小論文の作成技法

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