慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

文学部3類のオススメサイト

 面白いサイトを見つけました。『やるおで学ぶ卒業論文の書き方(文系編)』というサイトなんですが、見ていて面白かったです。やる夫が『羅生門』を題材に卒論を書いていきます。

だから前にも言ったように、「どのように」面白いのか、
その根拠を 明瞭にすることが重要になってくるんだ。   
糸口はいくつかあるから、さわりだけ教えるぞ。  
まず一つ目は、この問題を、今の時代に置き換えてみることだ。
盗まないと餓死する、あるいは自分の利益のためには善悪を問題にするどころじゃ
ないっていうシチュエーションは、何も芥川の時代だけの問題じゃない。
今の時代でも、ちょっと探せば見つかるだろう。
たとえば「勝ち組」「負け組」という言葉は、この下人にはあてはまるか?
 
二つ目は、「羅生門」と同じぐらいの年代に書かれた、
テーマがよく似た文学作品や評論なんかを探すことだ。
よく比較されるのは、多分、漱石の「私の個人主義」じゃないか?
これは「羅生門」の前年に本にまとめられたものだ。
egoism(利己主義)とindividualism(個人主義)との比較は、
ありきたりといえばありきたりだけど、やる夫のテーマには合致しているな。
 
三つ目は、「羅生門」が書かれた時代に、やる夫が興味を惹かれたのと
同じテーマが、現実的な問題になっていないかを探すことだ。
たとえば「羅生門」が執筆されたのは、第一次世界大戦の最中だ。
やる夫が下人に感じた道徳観が、武力によって正当化されていった時代だ。
よく誤解されているけれども、作家は引きこもりじゃないからな。
文学作品をなぞっているだけでは見えないけれども、実は彼らくらい、
同時代の出来事に敏感に反応した種類の人間は少ないぞ。
 
こうやって比較対象をピックアップしていけば、自分でも整理しやすいだろ。
卒論を書くっていうのは、こういうふうに、自分が漠然と感じていたことを、
分析・総合していくことなんだ。
ここが作文と論文との一番大きな違いだな。

 時代を超えて読み返される文学作品は多いです。例えば、少し前はワーキングプア問題から、『蟹工船』などのプロレタリア文学が再び人気を取り戻しました。小説だけではなく、映画も同じです。人気のある小説には、当時の人々の心を掴んだ何かがあるはずです。