慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

エスノグラフィ(2)

 エスノグラフィに関して、詳しく書かれたウェブサイトを見つけました。株式会社リサート&ディベロプメントという会社の運営するウェブサイトの「『エスノグラフィ』という手法」というページです。ここで紹介しておきたいと思います。
 エスノグラフィは以下の四つのステップによって進んでいきます。

Ⅰ.事前アンケート(=デプス・インタビュー1への足がかり)
Ⅱ.デプス・インタビュー1
Ⅲ.日記・メール&自宅訪問インタビュー
Ⅳ.デプス・インタビュー2

 それぞれがどのようなものか、抜粋していきます。今回の日記は、ただ単に抜粋を行うのみです。次回、例を用いそれぞれを具体的に記述していく予定です。


1.事前アンケート〜デプス・インタビューステップ

 通常の定性調査までのステップだが、この段階でどの程度次に深掘りしたいポイントが探せるかが重要となる。単に興味の場合もあり、やや意地悪い見方もあり、いずれにしても対象者への興味をどこまで醸成するかがこのステップのキーとなる。
 デプス・インタビューの事前情報として、アンケートをとってその人を読み込んでおく。ここでのデプス・インタビューは雑誌等の対談に近いものと考えている。相手のことをある程度知っていないとインタビューが成り立たない。そのために事前アンケートは一般的なプロフィールや○×方式で意識を見るものの他に、たとえば食生活なら中学生〜現在に至るまでのその人の環境とその時々の食の好み、料理への関与、外食の状況等を年表でつけてもらうなど、当該テーマについての対象者のヒストリーを抑えておくことが必要になる。
(中略)
 実際のインタビューでは事前アンケートをもとに対象者自身に自分を語ってもらいつつ、こちらの興味もぶつけながら少しずつ対象者を理解し、次の興味を探していく。ここで対象者が話していたことが、ステップを重ねるごとに深くなっていったり、変化したりしていくことがあり、それが「気づき」につながっていく。入り口の情報として幅広く丁寧にインタビューし次につなげるステップと言える。

2.日記・メールステップ

 デプス・インタビューで輪郭が明らかになった対象者のリアルな24時間を知り、それが当該テーマにどんな影響をもたらしていそうか探るステップとなる。リアルさのためにはタイムリーな日記のやりとり(疑問点はその日のうちにメールや電話で確認)と、次のインタビューに向けてその日記を整理し、整理したことで見えてくるポイントをつかんでおくことが重要になる。
(中略)
 更にその日記を、食日記であれば期間内一覧で写真と共に整理すると定期的に繰り返されるメニューや、「今日は疲れた」コメントの日に必ず登場するメニュー等、日々を追うだけでは見えないものも見えてくる。スキンケア日記ならば毎日「肌得点」をつけてもらいグラフ化していくことでその人の肌の状態が何に影響されているのかが少しずつわかるようになってくる。
 日記としてのデータが積み重なっていく一方で、日記をつけることで対象者自身の意識も活性化され、「なぜ自分はこの行動をとるのか」を考えるようになるのもこのステップの重要なポイントである。

3.訪問インタビューステップ

 事前の様々な調査と日々のメールのやりとりでかなり「親しくなった気がする」対象者宅を訪問する。ここで言えるのはその人が住む空間が語る雄弁さである。持っているもの、それの置き方…特にキッチンのような作業場であればより「その人色」が濃く出ていて、また自分と比べて何が違うのかもはっきり見える。なぜこの家はこんなに小皿が多いのか、レトルトカレーがこんなに大量にストックされているのか…等、自分と違う空間は素直な疑問も突っ込みどころも満載である。

4.最終インタビューステップ

 対象者の家の中も、実際の行動も確認し、かなり「わかり合えた気になった」対象者に対し再度インタビューする。初回インタビューの時と比べてどれだけその人を知ることができたか、その人への関心度がどの程度高まったかがここでわかる。会場で対象者を迎える際、友人を迎えるような錯覚を感じることもある。今まで聞いてきた、見てきた様々なことから自分が感じた「気づき」をここで改めて確認しあうステップである。



 このようなステップです。
 しかし、これを見るよりも実際に株式会社R&Dのウェブサイトを見たほうがいいでしょう。大体わかります。
 次回『エスノグラフィ(3)』では、具体的な例を当てはめていきます。