慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

社会学史1(4)

 フーコーと並んで書き易いのが、ロバート・キング・マートンです。彼は「逸脱」に関する研究で知られています。彼の逸脱論の中心をなしているのが、「ラベリング理論」と「準拠集団論」です。
 ラベリング理論というのは、個人に対してあるレッテルを貼ると、貼られた当人はそのレッテル通りに行動してしまう、という理論です。例えば髪を染めている高校生に「不良」というレッテルを貼ると、その当人は次第にそのレッテル通りに不良化していきます。これを「予言の自己成就」といいます。
 ところで近年、医者から「鬱」や「アスペルガー症候群」という診断が下されると、鬱に与えられたイメージどおりに行動する人が増えているような気がします。mixiなんかでよく見かけます。関係ないですが私は軽度の吃音をもっています。ですので、私も吃音に与えられたレッテル通りの行動をします。冬でもランニング姿で絵を描き、周囲の人におにぎりをせびります(嘘です)。ただmixiなどで「鬱」や「アスペルガー」と表明している人たちは、過去にえげつないほど辛い思いをしたことのある人が殆どだと思います。
 しかし、この世の中、全ての人間は何らかの「マイノリティ」に属していると思います。障害を持っていたり、片親だったり、在日外国人だったり。大なり小なり、一人一人が何らかの特殊な要素を持っています。ちなみに前の日記のフーコーユダヤ人で同性愛者でハゲでした。三重苦です。そして、そのマイノリティ要素が、たとえそれが微々たるものであっても、それ以外のマジョリティの部分を差し置いて、個人を特徴付けると思います。
 次に「準拠集団論」ですが、準拠集団というのは、個々人が所属している集団です。それは不良グループやオタクグループがあてはまります。例えば、私の最寄のコンビニにはよく不良がたむろしています。こうした行為は、社会規範的にはNGですが、彼らの規範では、ごくごく普通の行いです。
 また、オタクに関してですが、彼らは今、こぞって熱海に集っています。DSやiphoneを持って、何かの集団を形成しています。彼らの中には抱き枕を持参している者もいます。彼らは一体何の目的で熱海で集っているのか。その理由は、それが彼らの規範に従った行為だからです。
 このように、人々は何らかのグループに所属して生きています。そのグループは時に反社会的であったり、非社会的であったりします。しかし、こうしたグループの中にいるうちは、そうしたことはなかなか気付きません。それがマートンの「準拠集団論」です。
 といっても、最近の準拠集団は、それが反社会的・非社会的であることを理解した上で新たなアクションを起こしていることが多いです。例えば、ラッパーは不良文化の一つですが、最近は家族への感謝の言葉を歌にするラッパーが増えています。「不良」と「感謝」というギャップでいいイメージを定着させるのが狙いだと思います。また、オタクも周囲(一般)からのウケや人気を狙うために、あえてオタク的な行動をとる「オタ充」が増えています。
 マートンの逸脱論をレポートに書くときは「承(=旧情報)」にマートンの理論の概略を書き、そして「転(=新情報)」では、現代特有の逸脱行為をマートン的な視点から見ていけばOKでしょう。