慶應通信! r.saitoの研究室

慶應義塾大学通信教育課程のブログです。皆さんの卒業を応援します。

夏休みの思い出

 今年も、一際暑い夏になりそうです。というか、なっています。皆さん、熱中症にはお気をつけください。私は一度、熱中症に掛かったことがあります。当時19歳でした。慶應に入る前です。私の実家が宗教をやっていて、僧侶になるための資格(「得度」という)を得るために京都に行ったときに罹りました。
 京都は盆地になっていて、夏は非常に暑いです。本堂での読経の練習のときは、クーラーはなく、わずかな扇風機だけでした。ずっと正座で座っていると、足がしびれてきます。それは当然のことですが、しばらくすると、聖典を持つ手が震えます。そして、すぐに顔が(というか頭全体が)ブルブルブルブル震えます。痙攣です。気絶しそうになりました。暑い日は、特にお年寄りは部屋を暑いままにしてはいけません。クーラーや扇風機をつかって、体を風邪の引かない程度に冷やすようにしましょう。
 そろそろ、京都は得度の季節です。西本願寺に200名を超えそうなくらいたくさんの得度志望者が集まって、読経します。夏休みだったので、多くの学生が龍谷大学の学生でした。龍谷大学には「伝道者推薦」という入学方法があります。これは得度を受ける代わりに入学試験が免除される仕組みです。途中でやめれば中退の可能性が出てきますので、何が何でも得度だけは済ませたいと思う学生がたくさんいました。伝道者推薦で入学してきた女の子も多かったので、彼女らはとくに大変そうでした。ただ、女性は男性と違い頭をそる必要はありません。普段の髪が長い目の私は、とても羨ましいと感じました。
 研修の日は11日前後です。でも、非常に長いと思えた11日です。あの1日は今の私の5日です。嫌な時ほど時間の経つのが遅いです。宿泊施設には1部屋6人くらいで泊まりますが、ホワイトボードにはどの部屋も「あと○○日」と書かれています。北は北海道、南は沖縄から人が集まります。慣れない所の生活は辛いのでしょう。というか、かつて京都の出町柳というところに住んでいた私ですら辛かったです。誰もが大変です。
 一番辛かったのは朝です。真夜中になっても喋る男の子が同じ部屋にいたので、なかなか寝付けませんでした。殺意を押さえる11日間でした。朝は5時50分起床です。朝になると佛教讃歌が建物内を流れます。禍々しい地獄の音楽です。得度が終わっても、耳から離れることはありませんでした。
 得度を終えて、しばらくすると大学の特別授業が始まりました。みんなと久々に出会い、髪の毛のことについて色々聞かれました。もちろん、触ってくる人もいました。慣れない丸坊主は、私にとって丸裸で外出するような感覚でした。髪の毛のことで、いろんな人が私に話しかけて、人間関係が広がったことは良かったことかもしれない。しかし、このイベントで、引きこもりの度合いがさらに深くなりました。
 髪の毛が生え揃ったのは、その年の12月でした。